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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

十六

」と新吉は昼間火鉢の前で、お作がフラフラと居眠りをしかけているのを見つけると、その鼻の先で癪らしく舌打ちをして、ついと後へ引き返してゆく。

お作はハッと思って、胸を騒がすのであるが、こうなるともう手の着けようがない。お作の知恵ではどうすることも出来なくなる。よくよく気が合わぬのだと思って、心の中で泣くよりほかなかった。新吉の仕向けは、まるで掌の裏を翻したようになって、顔を見るのも胸糞が悪そうであった。

秋の末になると、お作は田舎の実家へ引き取られることになった。そのころは人並みはずれて小さい腹も大分目に立つようになった。伝通院前の叔母が来て、例の気爽な調子で新吉に話をつけた。

夫婦間の感情は、糸が縺れたように紛糾っていた。お作はもう飽かれて棄てられるような気もした。新吉はお作がこのまま帰って来ないような気がした。お作はとにかくに衆の意嚮がそうであるらしく思われた。

新吉は小使いを少し持たして、滋養の葡萄酒などを鞄の隅へ入れてやった。

「そのうちには己も行くさ。」

「真実に来て下さいよ。」お作は出遅れをしながら、いくたびも念を推した。

十六

お作が行ってから、新吉は物を取り落したような心持であった。