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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
十五
」
お銀は自分の十六、七のころを追憶しながら、水々した目でランプを瞶めていた。
「真実に不思議なようなもんですね。」お銀は笹村の指先を揉みながら、呟いた。
十五
朝寒のころに、K―がよく糸織りの褞袍などを着込んで、火鉢の傍へ来て飯を食っていると、お銀が台所の方で甲斐甲斐しく弁当を詰めている、それが、どうかして朝起きをすることのある笹村の目にも触れた。お銀の話に、商業学校へ通っていた磯谷に弁当を持って行ってやったり、雨が降ると傘を持って行って、よく学校の傍で出て来るのを待っていたという、その時の女の心持が二人の様子にも思い合わされた。笹村と通りへ買物などに出かけると、お銀は翌朝の弁当の菜を、通りがかりの煮物屋などで見繕っていた。そのK―も貸家の差配を例の若い後家さんに託して、自分は谷中のもといた下宿へ引き移って行ってからは、貸家にもいろいろの人が出入りしたが、明いている時の方が多かった。
甥は、その空家の一軒へ入り込んで寝起きをしていた。時には友達を大勢引っ張り込んで、叔父の方からいろいろの物を持ち運んで、飲食いをしていた。笹村が渡す月謝や本の代が、そのころ甥の捲き込まれていた不良少年の仲間の飲食いのために浪費されるらしい形迹が、少しずつ笹村に解って来た。