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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

」

初めて汚い笹村の寝床を延べた時のことが、また言い出された。

「僕はあまりふかふかした蒲団は気味がわるい。」

笹村は笑っていたが、それを言われるたびに、自分では気もつかずに過して来た、長いあいだ満足に足腰を伸ばしたこともない、いきなりな生活が追想された。そしてやはりその蒲団になつかしみが残っていた。安机、古火鉢、それにもその時々の忘れがたい思い出が刻まれてあった。そのべとべとになった蒲団も、今はこの人たちの手に引つ剥がされて、襤褸屑のなかへ突っ込まれることになった。

通りまで来ると、雨がぽつりぽつり落ちて来た。何か話して歩いているうちに、ふと笹村の気が渝って来た。

「お前は先へお帰り。」

笹村はずんずん行き出した。

「それじゃ蒲団地は買わなくてもいいの。」

女は惘れて立っていた。

笹村はちょっとした女の言い草に、自分の気持を頓挫ると、しばらく萎やされていた女に対する劇しい憎悪の念が、一時にむくむく活き復って来た。

お銀は一、二町ついて来たが、やがてすごすごと引き返して行った。

その晩笹村は帰らなかった。

朝家へ入って来ると、女は興奮したような顔をして火鉢の前に坐っていた。