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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

四十

周りに梅の老木の多い温泉宿では、部屋がどれもがら空きであった。お銀は子供をお手かけ負して、翌日も一日広い廊下を歩いたり、小雨の霽れ間を、高い崖の上に仰がれる不動堂へ登ったりした。梅園には時々鶯が啼いて、その日も一日じめじめしていた。

「やっぱり自分の家が一番いい。」

夕方雨戸が繰られるころになると、お銀は広い部屋に坐っていながら言い出した。

四十

子供が掴まり立ちをするころに、K―の手から裏の大工へ譲り渡されたその家を、笹村は立ち退かなければならなかった。大工は買い取るとすぐ改築の目算を立てたが、それ以前にK―から分割して借りていた裏の地所に、新築の借家がもう出来あがっていた。K―の借家は失敗に終ったが、大工の方は四軒建てて四軒とも明きがなかった。

「裏へ家が建つようでは、ここにもいられませんね、おまけに二階家と来てるんですもの。」

「出来あがったらそっちへ移ってもいいね。」

笹村とお銀とはこんな話をしながら、時々裏へ出て見ていたが、家はいずれもせせッこましく厭味に出来ていた。

壁が乾かぬうちに、もう贅沢な夜具やランプなどを担ぎ込んで来る人もあったが、それは出来星の紳士らしい、始終外で寝泊りしている独身ものであった。