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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
「これだから困る。このくらいならなぜいるうちに、もっと母子らしく打ち解けないだろう。」
笹村は手紙をそこへ投り出して、淋しく笑った。そして「もう自分の子供じゃない。」とそう思っている母親を憫れまずにはいられなかった。
いるうちに、笹村は一、二度上京を勧めてみたが、母親の気は進まなかった。東京へ来て、知らない嫁に気を兼ねるのも厭だったし、孫娘も人なかへ連れて行くのは好ましくなかったが、それよりも、笹村の考えているようにそう手軽に足を脱くことのできない事情が、そこにいろいろ絡わっていた。そしてそれを言い出すほどの親しみが、まだ二人の間に醸されていなかった。
「いい画が家にあったが、あれも売ってしまったんだろうな。」
笹村は少年時代に、ふと暗い物置のなかの、黴くさい長持の抽斗の底から見つけたことのある古い画本のことを思い出して、母親に訊ねるともなしに言い出した。その画が擬いもない歌麿の筆であったことは、その後見た同じ描者の手に成った画のしなやかな線や、落着きのいい色彩から推すことができた。
笹村は姉の家の二階に預けてある、その古長持のなかにある軸物や、刀のようなものを引っくら返して見た時、その画本を捜して見たが、どこにも見つからなかったので、ふと母親に確かめてみる気になった。