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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
そして時々自分の前途を考えないわけに行かなかった。
茶の室で、怯えたようなお銀が蔭でそっと差図して拵えさした膳に向って、母親の給仕で飯を食うのが苦しくなって来ると、笹村はそれを書斎の方へ運ばした。そして独りで寂しい安易な晩飯を取った。夜も冷や冷やする寝床のなかで、やっとうとうとしかけた眼がふと覚めると、痛いほど疲れた頭が興奮して来た。笹村はランプの心を挑き立てて、時々蒲団のうえに起き直った。そして本など拡げて、重苦しい頭を慰そうとあせるのであったが、性のよくない目は、刺すような光に堪えられないほど涙がにじみ出して来た。呼吸も苦しかった。
笹村は、よく夜更に寂しい下宿の部屋から逃れて、深い眠りに沈んでいる町から町を彷徨い、静かな夜にのみ蘇生っている、深山の書斎の窓明りを慕うて行ったころのことを思い出していた。そして、しらしらした夜明け方に、語りくたびれて森や池の畔を歩いていた二人の姿を考えた。
笹村は、触る指頭にべっとりする額の脂汗を拭いながら、部屋を出て台所へ酒や食べ物を捜しにでも行くか、お銀が用心深く鎖した戸を推し開けて、そっと外へ逃げ出すかするよりほかなかった。