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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

六十三

笹村は座敷の方に坐っているかと思うと、また落着きもなく勝手の方へ来て、少し高くなった四畳半の小室の方へやって来て、丸窓の下に寝転んだり、飛び石の多い庭へ下り立って見たりした。日によって庭にはどうかすると、砲兵工廠から来る煙が漲り込んで、石炭滓が寒い風に吹き寄せられて縁の板敷きに舞っていた。そんな日にはきっと空が曇って、棕櫚や竹の葉がざわざわと騒がしかった。笹村の頭も重苦しかった。

「これじゃしようがない。」

お銀は時々障子を開けて見ながら呟いた。

「それにこの家の厠の位置が、私何だか気に喰いませんよ。」

人殺しをしたある兇徒の妾が、ここにいたことがあるという話が、近所の人の口から、お銀の耳へじきに入った。

「そうさ、お前には隠していたけれど……。」

笹村はそれを聞いて笑い出した。

六十三

人を二人まで締め殺して、死骸を床下に埋めておいたというその兇徒は、犯罪の迹を晦ますためにじきにその家を引き払った。その時移って来たのが、この家であった。笹村が移って来る以前にいたある翻訳家も、その当時警官や裁判官に入って来られて、床下の土も掘り返されなどした。――そんな事実が、お銀をして急にこの家を陰気くさく思わしめた。