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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
看護疲れのしたお銀の乳が細ってからは、その不足を牛乳で補って来たが、それでも子供はかなり肥っていた。女中はそれを負って、廊下をぶらぶらしたり、院長の住居の方の庭へ出て遊んだりした。院長の夫人からは、時々菓子を貰って来たりした。つい近所にあるニコライの会堂も、女中の遊び場所の一つになっていた。笹村は日曜の朝ごとに鳴るそこの鐘の音を、もう四度も聞いた。お銀も正一を負いだして、一度そこへ見に行った。
「何て綺麗なお寺なんでしょう。あすこへ入っていると自然に頭が静まるようですよ。だけど坊やは厭なんですって。」
「僕も子供の時分は寺が厭だった。」
笹村は七、八つの時分に、母親につれられて、まだ夜のあけぬうちから、本願寺の別院の大きな門の扉の外に集まった群集のなかに交って、寒い空の星影に戦いていたことが、今でも頭に残っていた。「あの門跡さまのお説教を聞くものは、これまでの罪が消えて、地獄へ行くものも極楽へ行ける」というような意味の母親の言を耳にしながら、暗い広い殿堂のなかに坐っていた子供は、そこを罪を見現わされる地獄のように畏れていた。その時の心理ほどはっきり頭に残っているものはなかった。