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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

宵のうちの静かな町は、まだそこここの窓から、明りがさしていたり、話し声が聞えたりした。

「どこまでも私は尾いて行く。」

細君はせいせい息をはずませながら、浅井と一緒に並んで歩いた。疲れた顔や、唇の色がまるで死人のように蒼褪めていた。寒い風が、顔や頸にかかった髪を吹いていた。

そんなことがあってから二、三日のあいだ細君は病人のように、床につききりであった。

「つくづく厭になってしまった。」

浅井はお増の方へ帰ると、蒼い顔をして溜息を吐いていた。

「まるで狂気だ。」

「しようがないね、そんなじゃ……。」

お増も眉を顰めた。

「しかたがないから、当分うっちゃっておくんだ。」

浅井は苦笑していた。

お増の家のすぐ近くの通りをうろついている犬に、細君はふと心を惹かれた。その犬の狐色の尨毛や、鼻頭の斑点などが、細君の目にも見覚えがあった。犬は浅井について時々自分の方へも姿を見せたことがあった。

「奥さん、あの尨犬が電車通りにおりましてすよ。」

買物などに出た女中が、いつかもそう言って報したことも思い出された。

やがて犬の後をつけて、静かなその地内へ入って行った細君は、その日もその辺へ、買物に来ていたのであった。