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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

自分がまだ商売をしている時分に、脚気衝心で死んだ兄のことなどが思い出された。幼い時分に別れたその兄は、長いあいだ神戸の商館に身を投じていた。田舎にいる母親の時々の消息を通して、やっと生死がわかるくらい、二人のなかは疎々しかった。

「無駄なお鳥目なぞつかって、皆さんに心配かけちゃいけませんよ。」

お増は帰って行く室を、病室の戸口に送りながら、そう言って別れた。しんみりしたような話が、しばらく続いていたのであった。

退院させた静子が、階下の座敷に延べられた蒲団のうえに、まだ全く肥立って来ない蒼い顔をして、坐らせられていた。バスケットで運んで来た人形や世帯道具、絵本などの翫具が、一杯そこに拡げられてあった。

外には春風が白い埃をあげて、土の乾いた庭の手洗い鉢の側に、斑入りの椿の花が咲いていた。

「いや御苦労御苦労。」

浅井はろくろく髪なども結う隙のないほど、体の忙しかった女たちに声かけながら、やっと自分のものにした病人を眺めていた。子供は碧みのある、うっとりした目を大きくって、物珍しくそこらを眺めていた。

「今ちゃんにお礼として、何かやらなけれあならんね。