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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
六十三
「私アまた庄ちゃんのとこだと思ったら、そいつアおかしいね。」叔父はそう言いながら、また新聞に目を移した。
寄席へ入って行くと、目をきょろきょろさせながら、四下を見廻しているお庄のすぐ目の前に、磯野とお増が狎れ狎れしげに肩を並べて坐っていた。
六十三
お庄はその側へ割り込んで行くことも出来なかったが、そのままそこを出る気にもなれなかった。幾度も声をかけようとしたが、咽喉が渇きついているようで、声も出なかった。高座からは調子はずれの三味線の音ばかり耳について、二人並んだ芸人の顔なぞは、目にも入らなかった。二人は時々顔を見合って話をしていた。お庄はそのたびに胸がいらいらした。いつか番傘を借りて行ってから顔を覚えられてしまった、近所の折を拵える家の子息だという顎の長い中売りの男が、姿を見つけて茶を持って来ながら、
「お連れさんがそこへ来ていらっしゃいやすよ。」と言ってその顎を杓った。その時にお増が後を振り顧った。磯野も振り顧った。
お庄は明けてくれた磯野の右側の方へ座を移した。
「人を出し抜いたり何かして随分ね。私を誘うという約束だったじゃありませんか。」と、少し強いような調子で言った。