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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
中入り前に寄席を出ると、その足で蕎麦屋へ入って、それから寒い通りを縺れ合って歩いていた。蕎麦屋を出る時には、お庄の心も多少落ち着いていた。
「私のようなものでも、どうぞ姉と思って交際って頂戴ね。磯野さんにも、芳村の弟のつもりで、これから力になって戴くことに私お願いしたんですからね。」と、お増は猪口を差しながらお庄に話しかけた。なにかにつけて源之助の仮声ぶりを演るその調子が、お庄の耳には舐めつかれるようであった。
帰りに磯野もお庄もお増の宿へ寄ることになった。六畳ばかりのその部屋はきちんと片着いていた。先刻出て行ったままに、鏡立てなどが更紗の片を被けた芳村の小机の側に置かれて、女の脱棄てが、外から帰るとすぐ暖まれるように余熱のする土の安火にかけてあった。
「私冷え性なものですから、安火がなくちゃどうしても寝つかれないの。」と、お増は中へ手を挿し入れて、火を掘くった。そしてそこから小さい火種を持ち出して、火鉢に火を興しはじめた。長いあいだ慣らされて来たこの夫婦の切り詰めた世帯が、炭の注ぎ方にも思いやられた。田舎からの細い仕送りで、やっと図書館通いをしている芳村が、三度の食事を切り詰めても、傍に女がいなくては、一日も本を読んでいられないということを、お庄はお増から聞いて知っていた。