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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

磯野が後悔していることは、その手紙でも解ったが、そんなことは他の女に対しても、これまでないことではなかった。お庄は体が忙しかったので、その返辞を書く隙すらなかった。これぎり手紙のやり取りをする時がありそうにも思えなかった。

停車場へ着くと、提灯を持った男が十人余り出迎えていた。法被を着た男や、縞の羽織に尻端折りをして、靴をはいた男などがいた。中には羽織袴の人もあった。

「どうも御苦労さまで……。」という挨拶が、双方から取り交された。

その家は停車場から五、六町も隔たった通りにあった。暗い町中にはところどころに人立ちがしていた。広い空地に集うている子守の哀れな声で謳う唄の節が、胸に染みるようであった。お庄らの入って行ったところは、近ごろの普請と思われる扉のある新しい門口で、そこを潜ると、木立ちを切り拓いて作ったような、まだ落着きのない山ばかりの庭を通って、橋廊下で繋がれた一棟の建物の座敷の縁側へ出るように、飛び石が置いてあった。池の縁には松の葉蔭に燈籠の灯が見えなどした。

お庄らの上って行った部屋は、六畳ばかりの小間であった。浅山も媒介人も、インバネスを脱ぎ棄て、縁側から上って行くと、やがていろいろの人がそこへ顔を出した。