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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

箪笥や鏡、嫁入り道具一式を売る向いの古い反物屋の前に据えた天水桶に、熱そうな日が赫々と照して、埃深い陳列所の硝子のなかに、色の褪めたような帯地や友染が、いつ見ても同じように飾られてあった。来た当座は寂しいその店などは、目にも留らなかったが、見馴れるにつれて、思いのほか奥行きのあることも知れて来た。幽暗い帳場格子のなかで、算盤をはじいている四十ばかりの内儀さんも、そんなに田舎くさくはなかった。

店頭まで来てちょっと立ち停って、そのまま引き返して行った洋服姿の男が、ふと目についた。新しい麦稈帽子を着て、金縁眼鏡をかけていた丸顔の横顔や様子が、どうやら磯野らしく思われた。お庄はここを覗かれたような気がして、胸がどきりとした。

やがて門の方から奥庭へ入って行く男の姿が、目に入った。男は庭の真中に立って、うそうそ家のなかを見廻していた。お庄は帳場格子の蔭に深くうつむいてしまった。男は確かに磯野であった。

七十八

「お客さまが若い方のお神さんに、ちょっといらして下さいってそうおっしゃるんですよ。」と、一人の女中が莨盆などを運んで行ってから、やがてお庄を呼びに来た。