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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
六
「でも私、疳性ですから。」
六
笹村は机の前に飽きると、莨を袂へ入れて、深山の方へよく話しに行った。T―は前の方の四畳半に、旅行持ちの敷物を敷いて、そこに寝転んでいた。T―は長いあいだ無駄に月謝を納めている大学の方をいよいよ罷めて、好きな絵の研究を公然やり出そうかというようなことを、毎日考え込んでいた。父兄の財産によらずに、どうかして洋行するだけの金の儲けようはないものかなどと思い続けていた。島へ行ってから聖書などに親しみ、政治や戦争などを厭がるようになっていた。思想の毛色も以前より大分変っていた。
「僕は今小説を一つ書きかけているところなんだ。」と、鼻の高い、骨張った顔の相を崩しながら横に半身を起して、くうくう笑った。
机のうえには、半紙に何やら書きかけたものがあった。T―の頭には、小笠原島で見た漁夫や、漂流の西班牙人や、多勢の雑種について、小説にして見たいと思うようなものがたくさんあった。笹村のガラクタの中から拾い出して行った「海の労働者」の古本などが側にあった。
二人はこのごろT―のところへ届いた枝ごとのバナナを手断りながら、いろいろの話に耽った。