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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
笹村は何も手につかなかった。そして究るところは、やはり昨夜話したようにするよりほかなさそうに考えられた。
「産れて来る子供の顔が、平気で見ていられそうもないからね。」
笹村は、冴え冴えした声でいつに変らず裏で地主の大工の内儀さんと話していたお銀が入って来ると、じきに捉えてその問題を担ぎ出した。
「そうやっておけば、一日ましに形が出来て行くばかりじゃないか。」
「え、そうですけれど……。」
お銀はただ笑っていた。
「今朝は何だかこう動くような気がしますの。」
お銀は腹へ手を当てて、揶揄うような目をした。
「だけど、そう一時に思いつめなくてもいいじゃありませんか。あなたはそうなんですね。」
お銀は不思議そうに笹村の顔を見ていた。
気がくさくさして来ると、お銀は下谷の親類の家へ遊びに行った。
「今日は一つ小使いを儲けて来よう。」と言って化粧などして出て行った。
親類のうちでは、いつでも二、三人の花の相手が集まった。「兄さん」のお袋に友達、近所に囲われている商売人あがりの妾などがいた。お銀はその人たちのなかへ交って、浮き浮きした調子で花を引いた。そこで磯谷の噂なども、ちょいちょい耳に挟んだ。