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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
」
笹村は頷いたが、汽車が国境を離れるころには、自分の捲き込まれている複雑な東京生活が、もう頭に潮のように差しかけていた。妻や子のことも考え出された。
翌朝新橋へ着いた時分は、町はまだ静かであった。地面には夜露のしとりがまだ乾かぬくらいで、葭簾をかけた花屋の車からは、濃い花の色が鮮かに目に映った。都会人のきりりとした顔や、どうかすると耳に入る女の声も胸が透くようであった。
腕車から降りて行った笹村は、まだ寝衣を着たままの正一が、餡麺麭を食べながら、ひょこひょこと玄関先へ出て来るのに出逢った。子供は含羞んだような、嬉しそうな顔を赧らめて、父親の顔を見あげた。その後から、お銀も母親も出て来た。丈の高いお銀の父親の姿も現われた。弟も茶の室にまごまごしていた。
この弟の出て来ることは、国へ立つ前から笹村も承知していた。東京で育ったこの弟は、お銀が笹村のところへ来てから間もなく、脚気で田舎へ帰った。そしてそこで今日まで暮して来た。東京で薬剤師になろうとしていたこの弟は、そんなことを嫌って、洋服裁縫にかなりな腕を持っていた。
「弟も東京で早くこんな店でも出すようにならなけア……。