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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

五十九

」

笹村にはそんな器用な真似の出来ないことは、そういう深山にも解っていた。

「あの当時もそういうことはF―なども言っていたさ。」深山は言い足した。「君はとてもあの女を制御し得まいってことをね……。」

F―というのは、そのころ二人の間を往来していた文学志望の一青年であった。笹村はその当時の傍観者の一部の風評が、それで想像できるような気がした。

一ト幕ばかり芝居の立ち見をして、家へ帰った時には、笹村の頭は前よりも一層攪き乱されたような状態にあった。

「おいおい。」

笹村は薄暗い部屋のなかへ入って行くと、いきなり奥へ声をかけた。奥からは子供がひょこひょこ出て来たが、父親のむずかしげな顔色を気取ると、じきに顔を赧らめて出て行った。

笹村はお銀を呼びつけて、また同じような別れ談を繰り返した。

五十九

お銀はそんな時、傍へ行っていいか悪いか解らなかった。半日外へ出ていた間に、深山とどこで何を話して来たか、それも不安であった。深山の口から、何か自分を苛めるよな材料でも揚げて来たかのように、帰るとすぐ殺気立った調子で呼びつけられたのが厭でならなかった。あの当時、双方妙な工合で仲たがいをした深山の胸に、自分がどういう風に思われているかということは、お銀にも解っていた。