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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
六十四
笹村の疲れた足は、引き返そう引き返そうと思いながら、いつかそのはずれまで行ってしまった。そこからはまだ寒さに顫えている雑木林や森影のところどころに見える田圃面が灰色に拡がっていた。
その白けたような街道では、東京ものらしいインバネスの男や、淡色のコートを着た白足袋の女などに時々出遭った。
笹村はその道をどこまでもたどって行った。
六十四
時々白い砂の捲き上る道の傍には、人の姿を見てお叩頭をしている物貰いなどが見えはじめて、お詣りをする人の姿がほかの道からもちらほら寄って来た。それがだんだん笹村を静かな町の入口へ導いて行った。
この町にも前に通って来た町と同じような休み茶屋や料理屋などがあったが、区域も狭く人気も稀薄であった。不断でもかなりな参詣人を呼んでいるそこの寺は、ちょうど東京の下町から老人や女の散歩がてら出かけて行くのに適当したような場所であった。四十から五十代の女が、日和下駄をはいて手に袋をさげて、幾人となくその門を潜って行った。中には相場師のような男や、意気な姿の女なども目に立った。
勝手違いなところへ戸惑いをして来たような気がして、笹村がじきにその境内から脱けて出たころには、風が一層寒く、腹もすいていた。