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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

六十六

」と言ったのには、いくらか色気がつけてあるように思えて来た。

そこを出た時、笹村はかなり酔っているのに気がついた。出るとき、ちろちろした笹村の目に映ったのは、一度お銀の舅であったらしい貧相な爺さんであった。

汽車の窓に肱をかけて、暗い外を眺めている笹村の頭脳には、そんな家を訪ねたことを悔ゆる念も動いていた。お銀に向って、いつも真剣になっていた自分を笑いたくもあった。

汽車はおそろしい響きを立てて走った。

「お前の古巣を見て来た。」

笹村は家へ帰ってお銀の顔を見ると、そう言ってやりたいような気もしたが、やはり何事もないような風をするよりほかなかった。いつかはそれが勃発するだろう、とそれが気遣わしくもあった。

お銀はその時、茶の間で、針仕事をしている母親と一緒に、何のこともなしに子供に乳を呑ませながら、良人を待っていた。

笹村は、すぐに書斎の方へ引っ込んで行った。

六十六

一皮ずつ剥して行くように妻のお銀を理解することは、笹村にとって一種の惨酷な興味であると同時に、苦痛でもあった。深山に情人と誤解された弟と一緒に、初めて笹村の家へ来た当時のお銀――その時の冴え冴えした女の目の印象は、まだ笹村の頭脳に沁み込んでいたが、年々自分に触れたところだけのお銀で満足していられなくなって来たのが、侘しかった。