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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
七十
窓の外が白々と明けかかって、すやすやした風が蚊帳の中まで滲みて来た。笹村は意地くれた愛憎の情の狂いやすい自分の日常生活から、大分遠ざかっているような気がした。
七十
入院当時には満員であった病室が、退院するころにはぽつぽつ空きができて来た。まだ九月の半ばだというのに強い雨が一度降ってからは、急に陽気が涼しくなって、夜分などは白いベッドの肌触りが冷たいほどであった。お銀は家からセルなどを取り寄せたが、もうそんなころかと思うと、何だか心細かった。
空が毎日曇って、病院のなかはじめじめしていた。どうかすると森と静まることのある古い建物のなかに、バタンと戸を閉める音などが遠くの方でするかと思うと、どこからか子供の泣き声が聞えたり、女の笑い声が洩れたりした。入院患者のなかには、子供を女中と看護婦に委しきりで、自分たちは時々着飾って一日外で遊んで来る若い下町風の夫婦があったり、沼津へ避暑に来ていて、それなり発病した子供を連れて来ている大阪弁の女がいたりした。死骸になった子供に白いものを着せて抱いて出て行く若い細君、全治した子を着飾らせて、幾台かの車を連ねて威勢よく退院する人、それらは残らず笹村の病室の窓から透し視られるのであったが、そのたんびに夫婦はわが子の病勢を悲観したり、日数のかかるのを憤れったがったりした。