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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

」

お増はその当時よく浅井に話した。

「へえ。家内の方じゃ何とも言やしなかったよ。少しは変に思ったらしいがね。」

「そこが素人なんですよ。」

お増は気の毒そうに言った。

「私あの人と二人のときのあなたの様子まで目につきますよ。」

お増は興奮した目色をして、顎などのしっかりした、目元の優しい男の顔を見つめた。

十四

迷宮へでも入ったように、出口や入口の容易に見つからないその一区画は、通りの物音などもまるで聞えなかったので、宵になると窟にでもいるようにひっそりしていた。時々近所の門鈴の音が揺れたり、石炭殻の敷かれた道を歩く跫音が、聞えたりするきりであった。

二人きり差し向いの部屋のなかに飽きると、浅井は女を連れ出して、かなり距離のある大通りの明るみへ楽しい冒険を試みたり、電車に乗って、日比谷や銀座あたりまで押し出したりした。

小綺麗な門や、二階屋の立ち並んだ静かな町を、ある時お増は浅井につれられて歩いていた。二人は一緒に入るような風呂桶を買いに出た帰路を歩いているのであった。桶を買うまでには、お増は小人数な家で風呂を焚くことの不経済を言い立てたが、浅井はいろいろの場所におかれた女を眺めたかった。