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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

ようなことはなかった。

「大丈夫でござんすよ奥さん……。」

若い衆はそう言って、細君に復命した。

「しようがないね。きっとお前さんを捲いてしまったんですよ。」

終いに細君は素直にばかりしていられなくなった。大切な株券が、あるはずのところになかったり、債券が見えなくなったりした。それを発見するたびに、細君は目の色をかえた。どうかすると、出来るだけ立派な身装をして、自身浅井の知合いの家を尋ねまわるかと思うと、絶望的な蒼い顔をして、髪も結わずに、不断着のままで子供をつれて近所を彷徨いたり、蒲団を引っ被いで二日も三日も家に寝ていたりした。

たまに手紙や何かを取りに来る浅井の顔を見ると、いきなり胸倉を取って武者ぶりついたり、座敷中を狂人のように暴れまわったりした。

「そんな乱暴な真似をしなくとも話はわかる。」

浅井はようようのことで細君を宥めて下に坐った。

細君は、髪を振り乱したまま、そこに突っ伏して、子供のようにさめざめと泣き出した。

跣足で後から追いかけて来る細君のために、ようやく逃げ出そうとした浅井は、二、三町も先から、また家へ引き戻さなければならなかった。