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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

鏡台を据えた縁側の障子からは、薄い日影がさして、濁った顔の色が、黄色く鏡に映っていた。

「こら、こんなに禿が大きくなったよ。」

お雪は下梳きが、癖直しをしているとき、真中のすけた地を、指頭で撫でまわしながら、面白そうに笑った。

「もう十年も経ったら、このへんはまるで毛がなくなってしまうよ。」

お増は結立ての頭を据えて、側に莨をふかしながら見ていた。十六、七時分から、妾にやられたり、商売をさせられたりして来た、友達のこの十五、六年間の暗い生活が、振り顧られた。

「鼠の子を黒焼きにして飲むといいなんて、よくそんなことを言ったものだけれど、当てになりゃしない。」

お増はそんなことを思い出していた。

「やっぱり体が弱っているんだよ。」

「とてもやりきれないと思うことがあるものね。」

二人はそう言って、大話をしながら、髪結と一緒に笑った。

家へ帰って行ったお雪が、二、三日してまた訪ねるころには、もう浅井の湯治場から帰って来た家のなかが、何となくごたついていた。

来客のある二階から降りて来たお増の顔は、どこかいつもより引き締って、物思わしげであったが、食べ物の支度に取り散らかされた長火鉢の傍に坐って、銅壺に浸った酒の燗などを見ながら、待っているお雪の顔を見ると、意味ありげな目色をして、にやりと笑った。