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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
翌朝お今が訪ねて行った時、浅井もお増もまだ二階に寝ていた。
浅井の甥の学校へ行ったあとの茶の間は、しんとしていた。そこに静子が、千代紙などを切り刻みながら、寂しげに坐っていた。昨夜すぐこの近所で別れた浅井が帰ってからの家の様子を嗅ぎ出そうとでもするように、お今はいらいらしげに、そっちこっち部屋のなかを歩いていた。若い方の女中は、縁側の硝子障子に、せっせと雑巾がけをしていた。
時計が九時を打ってから、やっと二階から降りて来たお増は、明るい階下の光に、目眩しそうな目をして、火鉢の前に坐ると、口も利かずに、ぼんやりと莨をふかしていた。
近ごろ浅井の入り浸っている情婦の店の近所を、お増は一昨日の晩も、長いあいだ往来していた。その情婦のところへ、浅井はお柳のいたころの自分にしたように、株券や貴重な書類の入った手提げ金庫などを運んでいることが知れてから、二人の情交のだんだん深みへ入っていることが、お増に解って来た。情婦の母親が、菓子折や子供への翫具などをもって、ある日浅井の留守に、奥さんにお昵近になりたいといって、挨拶に来たことが、一層お増の心を、深い疑惑の淵に沈めた。