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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

瓦斯など引いて、西洋料理の道具などもコテコテ並べてあった。自分のいたころから見ると、どこか豊かそうに見えた。

奥から子供を愛している女中の声が洩れて来た。夫人が誰かと話している声も聞えた。客は女らしい、華やかな笑い声もするようである。

しばらくすると、束髪に花簪を挿して、きちんとした姿をした十八、九の女が、ツカツカと出て来た。赤い盆を手に持っていたが、お作の姿を見ると、丸い目をクルクルさせて、「どなた?」と低声で訊いた。

「奥様いらっしゃいますか。」とお作は赤い顔をして言った。

「え、いらっしゃいますけれど……。」

「別に用はないんですけれど、前におりましたお作が伺ったと、そうおっしゃって……。」

「ハ、さよでございますか。」と女中はジロジロお作の様子を見たが、盆を拭いて、それに小さいコップを二つ載せて、奥へ引っ込んだ。

しばらくすると、二歳になる子が、片言交りに何やら言う声がする。咲み割れるような、今の女中の笑い声が揺れて来る。その笑い声には、何の濁りも蟠りもなかった。お作はこの暖かい邸で過した、三年の静かな生活を憶い出した。

奥様は急に出て来なかった。