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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
庭には虫の鳴くのが聞えていた。
お庄が下駄を持って来て、それを縁側へ拾い揚げるころには、父親は箒を持ち出して、さッさと部屋を掃きはじめた。母親がしょうことなしに座を起つと、子供も火鉢の側を離れてうろうろしていた。お庄は泣き出す小さい子を負い出すと、手に玉蜀黍を持って狭い庭をぶらぶらしながら家の様子を見ていた。父と母とは台所で別々のことを働きながら言い合っていた。
お庄は薄暗い縁側に腰かけて、母親のことを気の毒に思った。放埓な気の荒い父親が、これまでに田舎で働いて来たことや、一家のまごつき始めた径路などが、朧げながら頭脳に考えられた。お庄が覚えてから父親が家に落ち着いているような日はほとんどなかった。上州から流れ込んで来た村の達磨屋の年増のところへ入り浸っている父親を、お庄はよく迎えに行った。その女は腕に文身などしていた。繻子の半衿のかかった軟かものの半纏などを引っ被けて、煤けた障子の外へ出て来ると、お庄の手に小遣いを掴ませたり、菓子を懐ろへ入れてくれたりした。長く家へ留めておいた上方ものの母子の義太夫語りのために、座敷に床を拵えて、人を集めて語らせなどした時の父親の挙動は、今思うとまるで狂気のようであった。