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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
叔父は奥へ引っ込んで、叔母に紙入れを出さすと、余所行きの羽織を引っかけて、ぶらりと女をつれ出した。
暮の決算報告などに忙しい時期であったが、叔父は会社の方もあまり顔出ししなかった。出にくい事情のあるらしいことだけは叔母にも解っていたが、それを訊こうとしても、無口な叔父はにやにや笑っていて、何事をも語らなかった。戦捷後持ちあがったいろいろの事業熱が、そろそろ下火になって、一時浮き立った人の心がまた沈んでいた。叔父もそんなような波動に漂わされた端くれの一人であることが、お庄の胸にも朧ろげに感ぜられた。
会社の提灯を持った爺さんが、叔父の居所を捜しに来た。お庄はへどもどして奥へ駈け込んだ。
「困るね。」と、叔母は厭な顔をして、玄関口へ現われた。
「何、小崎さんがお預かりになっている鍵さえあれば解ることなのです。別に御心配なことじゃありませんでしょう。けど、いよいよ鍵がないとなると、今夜中に金庫を打ち壊さんけれアならんそうですからな。」
実体そうなその爺さんは、上り框のところに腰をかけ込んで、脱け目のない目で奥口を覗き込んだ。
側に聞いている母親もお庄も、胸がどきどきしていた。