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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
昨夜の羽織や袴を畳んで箪笥にしまい込もうとした時、「其奴は小野が、余所から借りて来てくれたんだから……。」と低声に言って風呂敷を出して、自分で叮寧に包んだ、虚栄も人前もない様子が、何となく頼もしいような気もした。初めての自分には、胸がドキリとするほど荒い言をかけることもあるが、心持は空竹を割ったような男だとも思った。この店も二、三年の中には、グッと手広くするつもりだから……と、昨夜寝てから話したことなども憶い出された。自分の宅の一ツも建てたり、千や二千の金の出来るまでは、目を瞑って辛抱してくれろと言った言を考え出すと、お作はただ思いがけないような切ないような気がした。この五、六日の不安と動揺とが、懈い体と一緒に熔け合って、嬉しいような、はかないような思いが、胸一杯に漂うていた。
お作は机に肱を突いて、うっとりと広い新開の町を眺めた。淡い冬の日は折々曇って、寂しい影が一体に行き遍っていた。凍んだような人の姿が夢のように、往来している。お作の目は潤んでいた。まだはっきりした印象もない新吉の顔が、何かしらぼんやりした輪のような物の中から見えるようであった。