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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
八時ごろに、お庄はお袋に断わって、ちょっと四ツ谷まで出かけた。何だか今夜は家にじッとしてもいられなかった。
停車場まで来ると、前の床屋で将棋仲間に加わっていた芳太郎が、すぐにお庄の姿を見つけた。お庄が客の前へ出るのを、芳太郎は快く思わなかった。そんな時にはきっと料理場で菰冠りの飲口を抜いてコップで酒を呷ったり、お袋に突っかかったりした。そうしたあげくに、金を掴みだして、ぷいと家を飛び出して行った。手近に金のない時は、板片の端に黐をつけて、銭函の中から銀貨を釣り出した。
「家のものは皆な己のものだ。己の物を己が持ち出すに不思議はない。」
芳太郎はこう言って、銭函の前に、どかりと胡坐をかきながら、銀貨の勘定をしていた。
「それが厭なら、身上を速く己に渡すがいいんだ。」と、駄々を捏ねた。
親父は苦い顔をして、帳場の方で見ぬ振りをしていた。
「誰がこの身上を作ったとお思いだい。莫迦お言いでないよ。」と、お袋はたしなめたが、強いて止めることも出来なかった。お庄が来る少し前に、親子の間が揉めてしばらく家を出ていた親父を、また引っ張り込もうとして大喧嘩をした時、外から食い酔って帰って来た芳太郎に、刃物を振り廻されたことが、お袋にも気味が悪かった。