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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

伯父が失敗してから愚かな母親と弱い弟を扶けて今日までやって来たお銀は、そんなことを自然に見覚えて来た。そうしなければ生きられないような場合も多かった。

静かな夏の真昼の空気に、機械鍛冶で廻す運転器の音が、苦しい眠りから覚めた笹村の頭に重く響いて来た。家のなかを見廻すと誰もいなかった。台所には、青い枝豆の束が、差し込んで来る日に炙られたまま、竈の傍においてあった。風が裏手の広い笹原をざわざわと吹き渡っている。笹村は物を探るような目容で、深山の家へ入っていった。

六畳の窓のところに坐っている深山はいつもの通り、大きい体をきちんと机の前に坐ってうつむいていた。お銀が一畳ばかり離れて、玄関の閾際に、足を崩して坐っていた。意味を読もうとするような笹村の目が、ちろりと女の顔に落ちた。

「家を開けちゃ困るじゃないか。」笹村は独り語のように言って、すぐに出て行った。お銀も間もなくそこを起って来た。

「何も言ってやしませんわ。お鈴さんのことで話していたんですわ。」

お銀は深山が同情しているお鈴との一件のことで、自分が深山に悪く思われるのも厭であった。笹村はとにかく、お鈴を通して自分の以前のことを知っているはずの深山に、そう変な顔も出来ないというような心持もあった。