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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
女はそのまま奥へ入って行った。
「これアとても……。」
法師は水晶の数珠の玉を指頭で繰ると、本を開けて見ながら笹村に言いかけた。
「もう病気がすっかり根を張っている。」
「手術の効はないですか。」
「とても……。」と反りかえって、詳しく見る必要はないという顔をした。
笹村は金の包みを三宝に投り込むようにしてそこから出た。
その日M先生を訪ねると、仕事場のようであった先生の部屋は綺麗に取り片着いていた。先生は髪などもきちんと分けて、顔に入院前のような暗い影が見えなかった。傍には他の人も来ていた。
「今朝も××が来て、この際何か書けるなら、出来るだけのことはするとか言ってくれたがね、まあ病気でも癒ってから願おうと言っておいた。己はこんなにまでなって書こうとは思わん。」と先生はその吝ったれを嗤うように苦笑した。何もこの病人に書かさなくたって好意があるなら……という意味も聴き取れた。
「それに己は病気してから裕福になったよ。△△が昨日も来てハンドレッドばかり置いて行ってくれるし、何ならちっと御用立てしましょうかね。」と言って笑った。
笹村は、M先生のある大きな仕事を引き受けることになってから、牛込の下宿へ独りで引き移った。