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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

五月には、笹村が通りから買って来た内飾りが、その家の明るい二階に飾られた。ヒステレーの気味のあった細君は岡田が留守になると、独りで長火鉢の傍に、しくしく泣いているようなこともめずらしくなかった。二人で言合いをしている声も、時々裏から洩れ聞えた。

お銀母子と、その時分寄宿していた笹村の親類先の私立大学へ出ている一人の青年との入っていられるような家を一軒取り決めて、荷物をそこへ運び込む時も、子供は半日岡田の細君の背に負われていた。その家はそこから本郷に出る間の、ある通りの裏であったが、笹村はそこへ三人を落ち着かしてから、また自分の下宿を捜しに出なければならなかった。

「この家で、とうとうお正月を二度しましたね。」

お銀は引越の日に、いろいろのものの取り出された押入れの前にベッタリ坐って、思いの深そうに言い出した。

「こんな家でも、さア出るとなると何だか厭な気のするもんですね。」

笹村も、お銀が初めてここへ来てからのことが、思い出された。足かけ二年のあいだに、ここの台所の白い板敷きも、つるつると黝い光沢をもって来た。

時々袷羽織の欲しいような、風のじめつくころであった。