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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

暗い横町で、ばたばたと後を追っ駈けて来て体を検べる二人の角袖に出逢いなどしたが、足は自然に家の方へ向いて行った。

「敵――の――生命――と頼みたる……。」

こんな軍歌の声に襲われながら、笹村は翌朝十時ごろようやく目がさめたが、睡眠不足の頭は一層重かった。軍歌は板塀を隔てた背後の家の子供が謳っているのであった。

庭向きの下の座敷へ移ったころには、笹村も大分下宿に昵んで来た。時々お銀に厭な気質を見せられると、笹村の神経は一時に尖って来た。そして寄食している法律書生を呼びつけて、別れる相談をした。そういう時の笹村は一刻に女を憎むべきものに思い窮めた。

「私だってこうしていてもつまらないから……。」

女も、母親や書生の前で、負目を見せまいとした。その言い草が一層女の経歴について笹村に悪いヒントを与えた。そして不断は胸の底に閉じ籠められていたようなことまでが、一時にそれぞれの意味をもって、笹村の頭をいら立たせた。

「お前たちはまるで妾根性か何かで、人の家にいるんだ。」

「ええ、どうせ私たちのような物の解らないものは、あなたのような方の家には向かないんです。」

お銀は蒼い顔をしながら言い募った。