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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

怪しげなそこの門を入って、庭から離房めいた粗末な座敷へ通され、腐ったような刺身で、悪い酒を飲んで、お作一家の内状を捜った時は、自分ながら莫迦莫迦しいほど真面目であった。新吉は外方を向いて通り過ぎた。

こういう町に育ったお作の身の上が、何だか哀れなように思われてならなかった。この寂れた淋しい町に、もう二月の以上も、大きい腹を抱えて、土臭い人たちと一緒にいることを思うと、それも可哀そうであった。ショボショボしたような目、カッ詰ったような顔、蒼白い皮膚の色、ザラザラする掌や足、それがもう目に着くようであった。何だか済まないような気もしたが、行って顔を見るのが厭なような心持もした。

一里半ばかり、鼻のもげるような吹曝しの寒い田圃道を、腕車でノロノロやって来たので、梶棒と一緒に店頭へ降されたとき、ちょっとは歩けないくらい足が硬張っていた。

車夫に賃銀を払っていると、「マア!」と言ってお作が障子の蔭から出て来た。新吉が新調のインバネスを着て、紺がかった色気の中折を目深に冠った横顔が、見違えるほど綺麗に見え、うつむいて蟇口から銭を出している様子が、何だか一段も二段も人品が上ったように思えた。