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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

日の暮れ方にお増は独りで、透き徹るような湯のなかに体を涵して、見知らぬ温泉場にでも隠れているような安易さを感じながら、うっとりしていた。

二十

赤坂の方で新たに借りた二階建ての家へ、やっとお増の落ち着いたのは、その年もぐっと押し詰ってからであった。それまでにお増は幾度となく、下宿と先の家との間を往来したが、通りがかりに見る暮れの気の忙しい町のさまが、そうして宙に垂下っているような不安定な心持に、一層あわただしく映った。

「これじゃお正月が来たって、しようがありゃしない。まるで旅にいるようなものだわ。」

お増はそう言いながら、いつ引き払って行くか知れない家の茶の間で、不自由な下宿では食べることの出来ない、自分の好きな煮物などで、お今と一緒に飯を食べながら言った。

そこへ浅井も、一日会社や自分の用を達しに歩いていたその足で、寄って来た。

「今日ちょッと家へ行って見たよ。」

浅井は落着きのない目色をしながら、火鉢の側へ寄って来た。

「あの、奥様が旦那がお帰りになりましたらば、ちょいとでもいいから、おいで下さいましって。」

そう言って昨日の朝、お柳の方から使いが来た。