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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
六畳の部屋には、もう総桐の箪笥が一棹据えられてある。新しい鏡台もその上に載せてあった。借りて来た火鉢、黄縞の座蒲団などが、赭い畳の上に積んであった。ちょうど昼飯を済ましたばかりのところで、耳の遠い傭い婆さんが台所でその後始末をしていた。
新吉はまだ何やらクドクド言っていた。小野の見積り書きを手に取っては、独りで胸算用をしていた。ここへ店を出してから食う物も食わずに、少しずつ溜めた金がもう三、四十もある。それをこの際あらかた噴き出してしまわねばならぬというのは、新吉にとってちょっと苦痛であった。新吉はこうした大業な式を挙げるつもりはなかった。そっと輿入れをして、そっと儀式を済ますはずであった。あながち金が惜しいばかりではない。一体が、目に立つように晴れ晴れしいことや、華やかなことが、質素な新吉の性に適わなかった。人の知らないところで働いて、人に見つからないところで金を溜めたいという風であった。どれだけ金を儲けて、どれだけ貯金がしてあるということを、人に気取られるのが、すでにいい心持ではなかった。独立心というような、個人主義というような、妙な偏った一種の考えが、丁稚奉公をしてからこのかた彼の頭脳に強く染み込んでいた。