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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens

Aozora Bunko

「しかし、若、本郷のほうの動静は、いかがでござりました」

「サ、さようなことは、予だけが心得ておればよい」

不機嫌に吐き出した源三郎のこころの中には。

三つも、四つもの疑問があるので。

司馬道場で、じぶんが柳生源三郎ということを知っているのは、あの、見破ったつづみの与吉と、お蓮派の領袖峰丹波だけであろうか?

あの可憐な萩乃も、あばずれのお蓮様も、もう知っているのではなかろうか……?

だが、これは源三郎の思いすごしで、あのふしぎな美男の植木屋が問題の婿源三郎ということは、丹波が必死に押し隠して、だれにも知らせてないのです。

お蓮さまや萩乃にはむろんのこと、門弟一同にも、なにも言わずにある。

丹波が皆に話してあるところでは……。

変てこな白衣の侍が、左手に剣をふるって、やにわに斬りこんできたので、健気にもあの植木屋が、気を失った自分の刀を取って防いでくれた。ところが、剣光と血に逆上したとみえて、その感心な植木屋が、あとでは左腕の怪剣士といっしょになって、道場の連中と渡りあったとだけ……そうおもて向き披露してあるのだ。

だから、あの、星が流れて、司馬老先生が永遠に瞑目した夜、かわいそうな植木屋がひとり、乱心して屋敷を逐電した……ということになっているので。