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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens
四
つづく一同も、汗馬を鎮めて無言。
「おおい、お馬のおさむれえさん! おめえのおかげで、おらア、お嬢さんのおひねりを拾いそこねたじゃアねえか」
なんかと、ずっと向うにいるものだから、安全地帯と心得て、恨みをいうやつもいる。
丹波につぐ高弟、岩淵達之助と、等々力十内のふたりが、門ぎわに立ちあらわれました。
「御礼と萩乃様お筆のあとのある、たった一つの銭包みを拾った者はないか」
「そのつつみを手に入れた人は、出てこられたい。奥へ御案内申す」
「ないのかな、だれも拾わぬのか」
みんな今更のように、自分の拾ったお捻りを見たりして、群衆がちょっとシーンとなった瞬間、
「ホホウ、こ、この包みに、墨で御礼とある……」
と、伊賀の若様が馬上高く手をあげました。
四
いま丹波が最後に、源三郎をねらって三宝もろとも、はっしとばかり銭包みを投げ落とした瞬間――!
源三郎、眼にもとまらぬ早業で、その一つを掴みとったのだったが、意外といおうか、偶然と言おうか、それこそは、諸人熱望の的たる萩乃さまお墨つきの不知火銭だったので。
にくらしくても、反感は抱いていても、人間には、強い颯爽たるものを無条件に讃美し、敬慕する傾向があります。