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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens

Aozora Bunko

三

と、言って。

ためらったが最後、かわいいチョビ安の命はないもの。

右せんか、左せんか。左膳の額部に、苦悶の脂汗が――。

「八――九……」

「待った!」

くるしい左膳の声だ。

「しかたがねえ。負けた」

静かに、壺を畳へ置いて、高大之進のほうへ押しやりました。

三

「ウム、神妙な――」

微笑した大之進、それでも、めったに油断をみせません。片手に抜刀を構えたまま、じっと上眼づかいに、左膳をみつめて。

ソロリ、ソロリ……片手で風呂敷をときにかかった。

一座の眼は、その指先に集まっている。

鬱金の風呂敷が、パラリと落ちると、時代で黒ずんだ桐の木箱。

大之進は、ピタとその蓋に手をおいて、

「おのおの方ッ、こけ猿の茶壺でござるぞ。われわれの手で取りもどしたは、真に痛快事。これで、気を負い剣を帯して、江戸表まで出てまいった甲斐があったと申すもの」

一人が、四角ばって、すわりなおした。

「殿の秘命をはたし得て、御同様、祝着至極……」

「この問題も、これにて解決。殿のお喜びようが眼に見えるようでござるワ」

「さっそく、明朝江戸を発足いたし……」

謹んで、壺の蓋をおさえていた高大之進は、その間も、左膳から眼をはなさずに、