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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens

Aozora Bunko

水滴々

一

地の底……。

幾丈とも知れない地下で、地上からの穴は急勾配なのだから、闇のなかに、どこやらかすかに外光がただよっているにすぎない。

が、声をかけた人は、この暗黒になれているらしく、

「キ、貴殿も足を踏みはずしたのか。ハハハハハ、やられたな」

という声は、伊賀の暴れん坊、柳生源三郎である。

左膳もそれと気づいて、

「源三じゃアねえか。お前はこの司馬寮の火事で、焼け死んだと聞いたが、さては、ここは冥府とみえる。してみると、おれもあの世へきたのかな」

うすく笑って、左膳、声のするほうをすかして見ると、柳生源三郎のほのぼのとした白い顔が、その、四畳半ほどの真ん中にキチンと静座しているのが、彼の一眼にもうっすらと見えてきた。

「イヤ、源三、お前ははかられて、このおとし穴へ落ちこんだのだろうが、おれは、時のはずみでおちたのだ」

左膳はそう言って、源三郎の前にドッカと胡坐。

剣をもってふしぎな運命にむすばれる二人。

この思いがけない地底で、ふたたび顔をあわせたのだ。

「何から話してよいやら……」

と源三郎も、心からなつかしそうである。

左膳が、つづけた。

「この罠は、火事にまぎれてお前を落としこむために、こしらえたものに相違ねえ。