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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens
右御意之趣
一
そこへ、江戸家老の早駕籠が駈けこんできたのだから、もし人あって山の上から見下ろしていたなら、両側の家々から、パラパラッと蟻のような人影が走り出て、たちまち、二ちょうの駕籠は、まるで黒い帯を引いたよう……ワイワイいってついてくる。
何ごと? と町ぜんたい、一時に緊張した中を、一直線に対馬守の陣屋へ突っこんだ駕籠の中から、田丸主水正、ドサリ敷き台にころげ落ちて、
「金魚が――金魚が……」
立ち迎えた柳生家の一同、あっけにとられて、
「田丸様ッ、しっかり召されっ! しきりに金魚とおおせらるるは、水か。水が御所望かっ?」
右御意之趣
一
山里の空気は、真夏でも、どこかひやりとしたものを包んで、お陣屋の奥ふかく、お庭さきの蝉しぐれが、ミーンと耳にしみわたっていた。
柳生対馬守は、源三郎の兄ですが、色のあさ黒い、筋骨たくましい三十そこそこの人物で、だれの眼にも兄弟とは見えない。
二万三千石の小禄ながら、剣をとっては柳生の嫡流、代々この柳生の庄の盆地に蟠踞して、家臣は片っぱしから音に聞こえた剣客ぞろい……貧乏だが腕ッぷしでは、断然天下をおさえていました。
半死半生のてい、おおぜいの若侍にかつがれて、即刻、鉢巻のまま主君のお居間へ許された田丸主水正、まだ早駕籠に揺られている気とみえて、しきりに、眼のまえにたれる布につかまる手つき