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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens
三
その旅も、今夜でおしまいだというので、腕の立つわかい連中の大一座、ガヤガヤワイワイと、伊賀の山猿の吐く酒気で、室内は、むっと蒸れている。
供頭役安積玄心斎の大声も、一度や二度ではとおらない。
牡丹餅大の紋をつけたのが、
「こらっ、婢っ! 北廓はいずれであるか、これからまいるぞ。案内をいたせっ。ははははは、愉快愉快」
とろんとした眼で見据えられて、酌に出ている女中は、逃げだしたい気もち。
面ずれ、大たぶさ、猪首に胸毛――細引きのような白い羽織の紐が、詩を吟ずる。
玄心斎は、とうとう呶声をあげて、
「しずかにせいっ! わしがこうして、お部屋のそとから声をかけておるのに、貴様たちはなんだ。酒を飲むなら、崩れずに飲めっ!――若! や! 源三郎さまは、こちらにおいでではないのか」
師範代の玄心斎なので、一同は、ピタリッと鳴りをしずめて、キョロキョロあたりを見まわし、
「オヤ! 若先生は、今までそこにおいでなされたが……はてな、どこへゆかれた」
三
さっき、到着のあいさつに、おもだった門弟のひとりを、妻恋坂の司馬道場へ駈けぬけさせてやったのだが。
いまその者が、馳せ戻ってのはなしによると……。