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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens
耳こけ猿
一
女のかわりに、玄心斎が、
「故あってお蓮様の旨を体し、若のもとへ密偵に忍び入ったものであろう。どうじゃっ!」
「お察しのとおり、ホホホホ」
すこしも悪びれずに、女が答えた。
「お蓮さまの一党は、継子の萩乃さまに、お婿さんをとって、あれだけの家督をつがせるなんて、おもしろくないじゃアありませんか。それに、司馬の大先生は、いま大病なんですよ。きょうあすにも、お命があぶないんです。老先生がおなくなりになれば、あとはお蓮様の天下……ほほほ、それまでこの若様をお足どめして、かたがたようすをさぐるようにと、まア、あたしは、色じかけのお道具というところでしょうね」
「うぬっ、ここまでまいってかかる陰謀があろうとは――若っ、いかがなさるるっ」
と! 瞬間、ニヤニヤして聞いていた源三郎、胡坐のまま、つと上半身をひねったかと思うと、その手に、ばあっ! 青い光が走って、
「あウッ!」
いま歓を通じたばかりの女の首が、ドサリ、血を噴いて、畳を打った。播磨大掾水無し井戸の一刀はもう腰へかえっている。
玄心斎、胆をつぶして、空におよいだ。
耳こけ猿
一
首のない屍骸は、切り口のまっ赤な肉が縮れ、白い脂肪を見せて、ドクドク血を吹いている。