Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens

Aozora Bunko

「エエ町内のお方々、おさわがせ申してあいすいません。火事は遠うごぜえます。葛西領は渋江むら、渋江村……剣術大名司馬様の御寮――」

番太郎が拍子木を打って、この尺取り横町へはいってくる。

「チェッ! 火事は渋江村、ときやがら。こちとら小石川麻布は江戸じゃアねえと思っているんだ。しぶえ村とはおどろいたネ。おどろき桃の木山椒の木……」

さっき火事を見に出た隣近処の連中がガヤガヤいって帰ってくる。

じっと左膳の顔を見つめていたお藤、低声に、

「太郎冠者、あるか。おん前に……」

洒落たやつで、仇名のとおりに、櫛まきにとりあげた髪を、合わせ鏡にうつして見ながら、立て膝のまま口のなかでうたいだしたのは、長唄末広がりの一節――。

「太郎冠者あるか。おん前に。念のう早かった。頼うだ人はきょうもまた、恋の奴のお使いか、返事待つ恋、忍ぶ恋……」

恋の奴のお使いか。

返事待つ恋。

忍ぶ恋。

二度しんみりとくりかえしたお藤、

「馬鹿にしてるよ、ほんとに。アアア、いやだ、嫌だ」

十

「寝ぼけた半鐘じゃアねえか。畜生め、葛西領の火事に浅草の兄イが駈けだすなんざアいい図でおす」

なかにひとり物識りぶったのが、