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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens

Aozora Bunko

「これでだいたい終わったと思うが――うむ、桜井豊後守は?」

主水正はそろばんをのぞきこんで、

「六つ。ほほう、伊達公の上ではないか。えらくまた――桜井豊後、六つ」

「は」

帳面方が答えて、

一、桜井豊後守――六つ。

と書き入れていく。

「もう、来るべき筋はすべて来たようだ。きょうあたり締め切りにしようではないか」

こういって主水正が二人を見かわすと、そろばん係が、そろばんをがちゃがちゃとくずして、

「ただいまのところでは、別所信濃様が最低……」

記入係が筆をなめて、

「石川左近将監殿からは、まだ――」

「ほ! 石川どのは、まだだったかな」

この主水正の声と同時に、障子のそとの小縁に、前髪立ちの取次ぎの影がさして、

「御家老さまに申しあげます」

「なんじゃ」

「ただいま、石川左近将監様より御使者が見えまして――」

「来た、来た」

主水正は笑って、

「噂をすれば影じゃ。お広書院にお通し申しておけ。二つの組かな? それとも三つ半は出すかな……」

と、たちあがった。

二

石川左近将監の使者は、竹田という若い傍用人であった。

石川家の定紋、丸に一の字引きを染めぬいた、柿色羽二重の大ぶろしきに、何やら三方にのせた細長いものをそばにひきつけて、緊張した顔で広書院にすわっていた。