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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens

Aozora Bunko

来てみると、鉄十郎は二度びっくりしなければならなかった。

一面に焼け木の横たわる惨澹たる屋敷跡に、今し激しい斬りあいが始まっているではないか。

こけ猿の探索に、かねて邪魔を入れている丹下左膳という隻眼片腕の浪人者が、左手に長剣を握って、焼け跡の真ン中にスックと立っている。

とりまく面々は、上屋敷にいる同藩の高大之進の一党。

「おのおの方、援軍到来!」

大声にさけびながら、鉄十郎は馬をおりた。

ほかの騎馬の侍もかけ着いて手早く刀の目釘を湿す。おくれて駕籠や徒歩の連中もみな到来した。伊賀勢は、ここに思わぬ大集団となったのである。

その後は御無沙汰

一

もう乱軍だった。

二重三重の剣輪が、ギッシリ左膳をとりまいている。こうなってはいかな左膳でも、空を翔け、地にもぐる術のない以上、一本腕のつづくかぎり、斬って斬って斬りまくらねばならない……。

「ウフフ、枯れ木も山のにぎわいと申す。よくもこう木偶の坊がそろったもんだ」

刀痕の影深い片ほおに、静かな笑みをきざませて、左膳は野太い声でうめいた。

「この濡れ燕は、名代の気まぐれものだ。どこへ飛んでいくかわからねえから、そのつもりで応対しろよ」