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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens
剣神ともいうべき丹下左膳の腕前を見せられて、もうこの連中、すっかり怖気づいているのだ。
「めんどうだっ!」
叫んだ左膳、濡れ燕を大上段にひっかぶり、まるで棒をたおすように、正面の敵中へ斬りこんでいった。
縦横にひらめく濡れ燕。鉄と鉄のふれあうひびき。きしむ音、おめき声、立ち舞う焼け跡の灰。
その灰けむりのおさまったあとには、ふたたび水のように、つめたく静まりかえった丹下左膳の蒼い顔と、青眼にとった妖刀濡れ燕と……。
そして。
またもやそこここに三人の伊賀侍が、一人は膝をわりつけられて、立ちもならず、
「あっ痛ゥ!」
と、這いながら焼け灰をつかむ。その、苦痛にゆがむ顔のものすごさ!
もう一人は、肩先をやられて、片手で傷口をおさえながら、のたうちまわっている。三人目は、どこをやられたのか、あおむけにたおれたまま、血の池の中でしずかに眼をつぶろうとしている。
「三人!」
チョビ安の大声がした。この乱闘の場をすこしはなれた焼け残りの土蔵の横に、チョビ安、焼けた棒で、土蔵の白壁へしるしをつけながら、
「父上ッ! 〆めて九人……!」
二
早朝から、空の大半は真っさおに晴れて、焼け跡のすぐそばを流れる三方子川の川づらを、しずかになでてくるさわやかな風。