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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens

Aozora Bunko

「おう、兄ちゃん、おいらにも一ぺえくんな。酢をきかしてナ」

と、その桶のそばへうずくまった。

「へえい! 江戸名物はチョビ安のところ天――盛りのいいのが身上だい」

ところ天やの小僧、ませた口をきくんで。

「こちとら、かけ酢の味を買ってもらうんだい。ところ天は、おまけだよ」

「おめえ、チョビ安ってのか。おもしれえあんちゃんだな。ま、なんでもいいや。早えとこ一ぺえ突き出してくんねえ」

言いながら、与の公、手のつつみを地面へおろして、鬱金のふろしきをといた。出てきたのは、時代がついて黒く光っている桐の箱だ。そのふたを取って、いよいよ壺を取り出す。

古色蒼然たる錦のふくろに包んである。それを取ると、すがりといって、赤い絹紐の網が壺にかかっております。

その網の口をゆるめ、奉書の紙を幾重にも貼り固めた茶壺のふたへ、与吉の手がかかったとき、その時までジッと見ていたところ天売りの子供、みずから名乗ってチョビ安が、

「小父ちゃん、ところ天が冷めちゃうよ」

洒落たことをいって、皿をつき出した。

「まア、待ちねえってことよ。それどころじゃアねえや」

与吉がそう言って、チラと眼を上げると、あ! いけない! 折りしも、佐竹様の塀について、この横町へはいってくる一団の武士のすがた! 安積玄心斎の白髪をいただいた赭ら顔を先頭に……。