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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,861 characters · 480 screens
二、三度、四肢が痙攣した。
首は、元結が切れてザンバラ髪、眼と歯をガッ! と剥いて、まるで置いたように、畳の縁にのっている。
血の沼に爪立ちして、源三郎、ふところ手だ。
「硯と料紙をもて」
と言った。
なにも斬らんでも……と玄心斎は、くちびるを紫にして、立ちすくんでいた。
門弟たちは、まだ源三郎をさがしているのだろう。シインとした本陣の奥に、廊下廊下を行きかう跫音ばかり――この行燈部屋の抜き討ちには、誰も気づかぬらしい。
「萩乃さまの儀は、いかがなさるる御所存……」
玄心斎が、暗くきいた。
「筆と紙を持ってこい」源三郎は欠伸をした。
「兄と司馬先生の約束で、萩乃は、余の妻ときまったものだ。会ったことはないが、あれはおれの女だ」
「司馬老先生は、大病で、明日をも知れんと、いまこのおんなが申しましたな」
源三郎は、ムッツリ黙りこんでいる。仕方なしに、玄心斎が、そっと硯と紙を持ってくると、源三郎一筆に書き下して、
「押しかけ女房というは、これあり候えども、押しかけ亭主も、また珍に候わずや。いずれ近日、ゆるゆる推参、道場と萩乃どのを申し受くべく候」
そして、源三郎、つかつかと首のそばへ行って、しゃがむが早いか、固く結んだ歯を割って、首に、その書状をくわえさせた。